福岡家庭裁判所 昭和45年(少ハ)4号 決定 1970年11月24日
少年 G・J(昭二九・一一・三生)
主文
少年を昭和四七年一一月三日まで中等少年院に戻し収容する。
理由
少年は昭和四五年八月一八日中津少年学院を仮退院し、指定帰住地である福岡市弥生二丁目四番三一号更生保護会福岡弥生寮に帰住し、以後福岡保護観察所の保護観察下にあつたものであるが、
(一) 右帰住の翌日たる同月一九日より右寮主幹の斡旋で整備工場に溶接見習雑役工として就職したが、その後家族と会いたくなり、右に三日間通勤した後、同月二四日右寮の同室者の現金五〇〇円を旅費に盗み退寮し、家族の居住する○○市○区○○○○○×、×××番地に帰つた。
(二) 帰宅後は毎日無為徒遊の生活を送り、金に困つて金員を盗むため駅などを徘徊するなどしていたが、同年九月一五日頃保護観察所の出頭呼出を受けるや○○郡○○町の祖父宅に姿をかくすなどしてその出頭に応じなかつた。
(三) 同月二八日、担当保護司や実父につれられて帰寮し従前の職場に復帰したが、五日間就労したのみで同年一〇月四日妹の運動会に行くため日帰りの帰宅許可を受けて前記○○市の実家へ帰宅したまま帰寮しなかつた。
(四) そしてその後は右実父宅や時には神社境内などに寝泊りして徘徊徒遊し、同月三〇日福岡保護観察所に引致された。
ものである。
右事実は少年の保護観察における特別遵守事項である。
(イ) 保護会の規則を守り係員のいいつけを聞くこと
(ロ) 真面目に働くこと
(ハ) 無断外出したり外泊したり逃げ出したりしないこと
のうちの(ロ)及び(ハ)に違反するほか犯罪者予防更生法第三四条二項二号(一般遵守事項)にいう善行保持義務に違反するものである。少年の家族は両親健在であるがいずれも病弱であり、実父は金属回収の買い子をしているが、その稼働日数もきわめて少く、アル中的症状もあり、少年の保護監督を委ねるに十分でない。それに本件社会記録に明らかな少年の性格、資質ならびにその年齢等を合せ勘案するとき、この際犯罪者予防更生法四三条一項を適用して主文のとおり少年院に戻し収容し、その保護育成に努めるが最良の方法と思料する。
よつて主文のとおり決定する。
(裁判官 川本隆)